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代表 有留 修

タク・ホート中学校で新学生寮の完成記念式を盛大に開催


カンボジアのほぼ中央部に位置するコンポンチュナン州のタク・ホート中学校で2015年7月11日、カンボジアのNGO、EDFカンボジア(本部:公益財団法人 民際センター)の呼びかけに当会(カンボジアの子どもたちを支援する鹿児島人の会)が応えて建設された学生寮、「希望の家」の完成記念式(開寮式)が盛大に開催されました。 式典には、同寮の建設費を寄付した窪田伸一・トヨ子夫妻が鹿児島県肝付町からかけつけたほか、州政府の教育部門担当者や学校関係者、同校生徒とその両親、そして現地NGOのスタッフなど多数が出席、同校初となる本格的な学生寮の完成を全員で祝いました。 想像を絶する困難 寄付者の窪田夫妻とNGOのスタッフが同校の正門前に到着すると、正門から式典会場まで並んで花道をつくっていた同校の生徒たちがいっせいに歌を歌い始め、手に持った日本とカンボジアの旗を振りながら、一行を出迎えます。これには窪田夫妻も大感激。自然とうれし涙が夫妻の頬をつたっていきます。

正門で窪田夫妻らの到着を待ち受けるタク・ホート中学校の生徒たち

生徒たちの歓迎を受けながら式典会場に向かう窪田夫妻(中央)

式典では、国歌斉唱や子どもたちによる民族舞踊の披露に続き、新しい学生寮に入る女子生徒を代表して同校3年生のブオ・スレイヌーチさんが、寄付者の窪田夫妻をはじめとする関係者に感謝の言葉を述べました。

式典の開始を待つ生徒たち

民族舞踊による歓迎

衣装を替えて披露されたもう一種類の民族舞踊

踊り子たちに記念品を贈呈する窪田トヨ子さん

その中でスレイヌーチさんは、家が学校から遠く、通学するためには二つの川を越え、川にそって森の中を歩き、田んぼのあぜ道を通らなければならず、船と徒歩を使っての通学時間は片道数時間であるとの困難な状況を説明しました。

そのために親元を離れ、寮生活を送っていますが、竹とヤシの葉でできた寮は粗末なつくりのため、天井にはすぐ穴が開き、雨が降ると雨漏りがするために竹でできた床をビニールで覆わなければなりません。そうした困難な状況にもかかわらず、よりよい未来のために同じ寮生同士が励まし合って勉学を続けているものの、ときには家が恋しくてホームシックになってしまうといいます。

寮生を代表してスピーチするスレイヌーチさん(中央)

今回完成した新しい学生寮はそうした彼女らの困難な状況を一変させることになります。それに対し、スレイヌーチさんは次のように述べて、感謝の意を表しました。 「窪田夫妻の尊い寄付に対して心からの感謝を表明するとともに、この学生寮を大切に守り、一生懸命勉強することを誓います」 教育向上と貧困削減につながる貢献 次に、あいさつに立ったタクホート中学校のヌット・スクチュオン校長からは同校に関する報告があったほか、新しい学生寮の意義について次のような発言がありました。

タク・ホート中学校のスクチュオン校長

「この新しい学生寮はわが校の生徒にとって、きわめて重要なものです。生徒らは何の心配もなく、安全のうちに、そして健康と温かみのあるなかで、しかも学ぶことに対する障害が取り除かれて、この寮で暮らすことができます。(さらに)この学生寮によって中途退学者の率が下がり、教育の質が向上することでしょう。学校関係者、生徒とその親を代表して、この学生寮を末永く、正しくお世話することを固くお約束します」 続いて、今回の学生寮の建設にあたり、学校側と寄付者をつなぐ重要な役割を果たしたEDFカンボジアのチェン・チャンディ代表から、カンボジアの教育事情に関する報告と同団体の活動報告がなされました。

カンボジアの教育事情について説明するチャンディ代表

それによると、2014年の時点でカンボジア全土に小学校は6,993校、中学校が1,659校、高校が444校あり、それぞれの就学率は95.6%、35%、20%です。中学レベルで就学率が激減している背景には、家から学校までの距離、交通手段の不足、学生寮の不足、そして何よりも貧困があると同代表は説明します。 さらにEDFカンボジアの本年度(2014-2015)の活動について、チャンディ代表は、小中学校合わせて1,410名の生徒に奨学金を提供するとともに、「本日、窪田夫妻により『希望の家』という価値ある寄付をいただくことになりました。この学生寮は農村の人々にとって教育の発展、そして貧困の削減に大きく寄与することでしょう」と述べ、窪田夫妻の貢献を高く評価しました。 最初の一歩が次の一歩につながる 次にあいさつに立った寄付者の窪田伸一さんは、初めて訪れたカンボジアの印象を語るとともに、カンボジアの農村の子どもたちが直面している数々の困難に触れつつ、今回の寄付の動機について次のように語りました。

スピーチする窪田伸一さん

「農村で暮らし、学んでいるみなさんは、日本のような豊かな国から来た者にはわからない、多くの困難に直面していることでしょう。学びたくても、いろいろな問題で、学校に行けない子どもが大勢いるとも聞いています。日本の豊かな子どもたちからすると想像できない世界です。その話を聞いて、私は、少しでもみなさんの力になりたいと思い、この学生寮の建設のための費用を寄付することにしました」 さらに、今回の寄付がきっかけとなり、支援の輪が広がり、子どもたちを取り巻く環境が少しでも改善することへの期待を表明しました。 「たった一棟の学生寮ですから、カンボジア全体で必要とされている何百、あるいは何千という学生寮を考えれば、とるに足らない貢献ということになるのかもしれません。しかし、問題を解決するには、どこかでだれかが最初の一歩を踏み出さなければなりません。この一歩が次の一歩につながり、みなさんの困難な状況が少しでも改善されることを祈ってやみません」 実は、現場に着いてから、このスピーチにある「この一歩が次の一歩につながり」という言葉がすでに現実のものになっていることがわかりました。今回の学生寮の建設が契機となり、そのすぐとなりで韓国のキリスト教団体が寄付した大きな学生寮の建設が進められていたのです。これには窪田夫妻もびっくり。自らの一歩がこのような形で次の一歩につながっていることに大きなよろこびを感じたのでした。

韓国からの支援により建設中の新しい学生寮

「希望の家」がもたらす本物の希望 最後に、コンポンチュナン州教育局のケット・メネアレット副局長からあいさつがあり、その中で同副局長はEDFカンボジアの長年にわたる貢献をたたえるとともに、新しい学生寮の建設費を寄付した窪田夫妻に感謝の意を表明しました。

コンポンチュナン州のメネアレット教育局副局長

スピーチの合間には、州政府や寮生からの感謝状が窪田夫妻に贈呈されたほか、窪田夫妻からは生徒たちに歯磨きと歯ブラシのセット、そして先生たちにはバッグが贈呈されました。また、学校に対して当会からバレーボールやサッカー、バトミントンなどのスポーツ用具一式が贈られました。

州政府から窪田夫妻に贈呈された感謝状

生徒たちからも感謝状が贈呈されました

カンボジアの子どもたちを支援する鹿児島人の会からはスポーツ用具一式が贈られました

すべてのスピーチが終了して、いよいよ新しい学生寮との対面です。完成した学生寮は長さが8メートル、幅6メートル、高さ5メートルの立派なもので、寮生が生活していた以前の寮に比べると雲泥の差があります。この新しい寮には女子の寮生のうち20名が入ることになっています。

こちらが完成した新しい学生寮

寮生たちが住んでいた古い学生寮

古い学生寮の内部を見学する窪田夫妻

その場で学生寮に関する説明がNGOのチャンディ代表からあった後、ネームプレートの除幕式が行われました。プレートにかけられていた赤い布が窪田夫妻の手によって取り除かれると、集まった人々から拍手が送られます。プレートには「希望の家」という寮の名称、そして窪田夫妻の名前が刻まれています。

広々とした新しい学生寮の内部

ネームプレートの除幕式

寄付者の名前が刻まれた記念のプレート

新しい学生寮の前で寮生と記念撮影

それから生徒たちとの記念写真の撮影があり、そこで夫妻は集まった生徒たちにさまざまな質問をしました。 Q:学生寮で必要なものはありませんか? A:蚊帳と枕がほしいです。 Q:大きくなったら何になりたいですか? A:(全員いっせいに)学校の先生です! Q:学生寮のほかに何か欲しいものはありますか? A:コンピューターを学ぶための施設です。

新しい寮の前で質問に答える寮生たち

除幕式が終わり、一連の行事が終了すると、一行は車に乗り込み、同校に通う二人の生徒の家庭を訪れました。窪田夫妻にとっては初めての農村の家庭訪問です。 生徒たちの家はカンボジア特有の高床式家屋ですが、水道や電気は通じておらず、家の中にも家財道具らしきものはほとんどありません。にもかかわらず、生徒たちの表情には暗さが感じられません。学業をこれからも続けていきたいとの強い希望が彼らの口からは出てきます。

訪れた窪田夫妻を出迎える生徒の母親(左)

間もなく高校に進学するという生徒とその家族

二人目の生徒の家を訪問(高く伸びるヤシの木を見上げています)

家庭訪問した女子生徒に記念品を贈呈する窪田夫妻

人のつながりから支援の輪が生まれる その日のすべての行事を終えた窪田夫妻に式典に参加した感想を聞いてみました。 「つくづく感じたのは人と人のつながりの大切さです。今回の学生寮の建設は、自分一人でできたものではありません。学校の関係者やNGOのスタッフをはじめとして、いろいろな人がつながって実現したものです。それを強く感じました。その意味で、これから日本に戻って、まわりの人たちに話をして、一人でも多くの子どもが学校に行けるようにしてあげられればいいなと思います」(伸一さん) 「実際、子どもたちが住んでいた以前の寮を見てショックを受けました。想像以上にひどい状態でした。ですから、新しい寮を建ててあげられて、子どもたちのよろこぶ姿を見て、支援してよかったと思いました。式典では、初めに子どもたちが並んで歌を歌いながら迎えてくれて、自然と涙が流れてきて、感動しました。あそこまでしれくれるとは予想もしていませんでした。テレビなどが伝えるのはほんの一部です。実際に行ってみて、もっともっと大変な状況であるということがわかりました。そういったものを伝えていって、支援の輪が広がっていけばいいなと思います。子どもたちの純粋な眼差しに心を打たれました」(トヨ子さん) 新しい寮をつくってもらった子どもたち、そのための寄付をした窪田夫妻、そして学校や州政府、NGO関係者全員にとって、この日は文字通り、末永く記憶に残る実に意義深い一日となったのでした。


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