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代表 有留 修

困難な状況の下でも笑顔を忘れないカンボジアの子どもたちに感動


カンボジアの子どもたちを支援する鹿児島人の会では12月初旬、当会にとって初めてとなるカンボジア農村教育事情視察ツアーを現地NGO、EDFカンボジアの協力を得て開催しました。

同ツアーには鹿児島県肝付町をはじめとする大隅地域から8名が参加、首都プノンペンから北西に車で2時間あまりのところにある同国コンポンチュナン州の中学校と高校の2校を訪れ、学校関係者から現状説明を受ける一方、学生寮を視察したほか、同校に通う生徒の家庭を訪問しました。 現実は写真でみるよりはるかに厳しい まず初めに訪れたトンレサップ川を渡った地域にあるコンポンレーン高校では、正門から歓迎会の会場までの花道を日本の旗を持った生徒たちが並んで日本からの参加者を歓迎。参加者の中には感激のあまりその場で涙を流してよろこびを表す人もいました。

トンレサップ川沿いに広がるカンボジアの農村風景

渡し船に乗って目指す高校に向かいます

20分ほどで対岸の地区に到着

出迎えの大型トゥクトゥクに乗り込むツアー参加者

日本からの訪問団を待ち受けるコンポンレーン高校の全校生徒

生徒たちがつくる花道を歩く訪問団一行

歓迎会では同校の校長から地域や学校に関する説明が行われ、その中で校長は地区内に高校が1校しかなく、家から学校までの距離があまりに遠いために、通いたくても通えない生徒が多数おり、学生寮の建設が必要とされている点を強調しました。

式典ではさらに訪問団から子どもたちに文房具一式が贈られました。贈られたのは同校に通う生徒のうち、特に経済的な困難を抱えている子どもたちで、EDFカンボジアが仲介となり、学校側が選んだ生徒です。文房具を受け取った生徒たちのあふれんばかりの笑顔がとても印象的でした。

校長の説明に耳を傾ける訪問団のメンバー

訪問団からは特に経済的困難を抱えている家庭の子どもたちに文房具一式が贈られました

幸い、同校にはEDFカンボジアの母体である日本のNGO、民際センターの支援によって今年建てられた学生寮(女子寮)があり、参加者は歓迎会に続いて同寮を見学しました。

寮の規模や構造は、同じくコンポンチュナン州のタクホート中学校に当会が肝付町在住の税理士、窪田伸一・トヨ子夫妻の寄付により今年7月に建設した学生寮とほとんど同じですが、床のタイルやソーラー照明といった各種備品が備わっておらず、寮生からはそうした備品を援助してほしいとの声が上がりました(関連記事はこちら)。

学生寮の内部を見学

学生寮の前で記念撮影

次に訪れた同校の男子生徒が暮らす学生寮は、ヤシの葉と竹でつくられた粗末な小屋。それを実際目にした参加者の中からは「写真で見るよりもひどい状態で、ショックを受けました」「こういうみすぼらしい寮に暮らしながらも笑顔を見せる生徒たちに感心しました」といった声が寄せられました。

そこで暮らす男子生徒の一人に話を聞くと、雨が降る日は特にたいへんで、天井に空いた穴から雨漏りがするために寝ることができず、雨のあたらない場所で座って雨がやむのを待つしかないといいます。

掘っ立て小屋のような男子生徒寮

天井のいたるところに穴が空いています

この寮で暮らす男性生徒

壁には難しい数式を書いた紙が!

そこで驚いたことの一つは、同じ敷地内に明らかに異なる種類の寮があったことです。大半の寮は掘っ立て小屋のようなものでしたが、中にはトタンでできた割と「立派」なつくりのものもあり、それが生徒の間に妬みや嫉妬といった感情を生まないのか、少し不思議に思えました。

しかしながら、生徒たちのくったくのない表情をみる限り、そうした心配は杞憂にすぎないのかもしれません。(後日、現地NGOの代表に説明を求めたところ、多少ゆとりのある家庭の子どもがそうした「立派」な家に住むことは、当然のこととして、その他の子どもたちは納得しているとのことでした。) 懸命に生きる子どもたちの姿に感動 男子生徒の寮の後に訪れたのは、同校と同じ敷地内に併設された中学校に通う二人の生徒の家です(カンボジアでは一般的に、高校があるところには中学校が併設されているそうです)。

最初に訪れた生徒は二人姉妹の姉で学年は中2。説明によれば、8歳のときに母親を亡くしたうえ父親は別の女性を見つけて家を離れてしまい、祖母の手で育てられているといいます。

祖母の手で育てられている女子生徒におみやげを贈呈

雨季には水が道路まで迫るといいます

次に向かったのは、川を渡る渡し船の船着場に隣接した市場。その市場の一角に、川で採れた貝(しじみ)を売っている店があり、一行はその店を営む女性と彼女の息子に会って話を聞きました。 上記女子生徒と同じ中学校で同学年という、その男の子は午前と午後にある授業の合間、川でしじみを採り、母親の商売の手伝いをしています。母親思いで働き者の男の子には一堂感激。参加者の中からは「昔は日本でもこの子のように親の仕事の手伝いをしていたものだ」「恵まれた環境にある日本の子どもたちにもこの子の姿をみてほしい」といったコメントが寄せられました。

孝行息子の家族といっしょに記念撮影

その後は、船着場からふたたび渡し船に乗って対岸に渡り、今年7月、当会の支援で学生寮が建てられたタクホート中学校を訪問しました。 コンポンレーン高校同様、日本からの訪問団がタクホート中学校の正門前に到着すると、全校生徒が花道をつくり、歌を歌いながら一行を出迎えてくれます。元気いっぱい、くったくのない笑顔で迎えてくれる同校生徒に訪問団のメンバーも笑顔で応えます。

タクホート中学校で生徒の出迎えを受ける訪問団

この学校でも訪問団から貧困家庭の子どもたちに文房具が贈られました

歓迎の後は、校長から同校の現状に関する説明があり、当会の支援で建てられた学生寮に対する感謝の言葉が述べられました。それに続いて、実際の授業風景を参観した後、学生寮を見学。ピカピカに磨かれた床を見ると、寮生たちが大切にしていることが一目瞭然です。

授業参観:いったいどんなことを勉強しているのかな

学生寮の見学に向かいます(写真奥が当会の支援で建てられた寮)

寮生といっしょに記念撮影

前回(2015年7月)訪れたときと比べて一つだけ違うことがありました。それは、そこで暮らす生徒の数が減っていたことです。前回は20名ほどでしたが、現在は15名だといいます。同じ敷地内に建てられた別の学生寮に一部は移ったということでした。

その寮とは、韓国のキリスト教系の民間団体が建てたもので、タクホート中学校の校長の説明によると、当会が建てた学生寮に刺激されて建設したといいます。当会の活動がそのような新たな寮の建設につながったということで、当会としてもうれしく思うとともに、今後、そうした動きがさらに拡がっていくことを期待します。 自立につながる支援の仕方とは 学生寮見学の後は、同校に通う二人の生徒(中学1年生の女の子と中学2年生の男の子)の家を訪問しました。特に印象的だったのが、両親を亡くし、姉の嫁ぎ先で暮らしているという男の子の家での出来事でした。

その姉の夫(義理の兄)が小型のほうき(ホコリ取り)をつくっており、それを見た参加者から「これはいい。ぜひ買って帰りたい」という声があがり、全員分のほうきを購入したのです。

お姉さん一家と暮らす男子生徒

こちらが購入したほうき

最後に訪れた女子生徒の家の前で記念撮影

ほうき一本の値段は日本の物価水準からすると考えられないくらいの安さです。全員分を合わせても日本円で数百円の世界。とはいえ、カンボジアの農村では1日の収入が1ドル(122円)程度の家庭も珍しくないということですから、この男の子の家にとっては思いがけない臨時収入になったことでしょう。 参加者の一人からは、「こういう形で彼らのつくっているものを買ってあげることが何よりの支援だと思います」という声が出されましたが、そのとおりだという気がします。彼らの仕事の成果にそれなりの対価を払ってそれを購入してあげる――フェアトレード(公正取引)の概念につながる考えですが、それが彼らにとって本当の自立につながる支援の仕方なのでしょう。 その領域に踏み込むだけの力が当会にあるのかどうか、それは現時点ではわかりません。しかしながら、将来的な課題として、今後考えていかなければならない指摘であることは確かでしょう。今回この男の子の家で起きた出来事をきっかけとして、時間をかけて検討していきたいと思います。 さて、この日、学校訪問を終えてから一行は首都プノンペンを離れ、世界遺産アンコールワットのあるシェムリアップに移動、そこで世界に名だたる遺跡群を数日かけて見学した後、そこからカンボジア南部のリゾート地、シアヌークビルに飛び、美しい海を前にリラックスした時間を過ごし、慌ただしかった今回のカンボジアの旅を締めくくったのでした。

シェムリアップでは世界遺産のアンコールワットなどを見学


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