当会にとって4回目となるカンボジア農村教育事情視察ツアーを2019年11月23日から29日まで行いました。
今回のツアーには北海道や埼玉、鹿児島から介護事業所経営者らを中心とした合計6名が参加。当初の計画ではそれぞれが地元の空港から中国東方航空の便で上海に飛び、そこで合流することになっていたのですが、直前になってフライトがキャンセルになるというハプニングが発生。急きょ、全員が一旦東京に集まり、そこから中国南方航空の便でまず広州に飛び、そこに一泊してからカンボジアに向かうことになりました。
一行はまず滞在先の広州で本場の広東料理を堪能した後、アンコール遺跡群で有名なシェムリアップに3日間滞在。アンコールワットやタ・プローム、バンテアイスレイといった遺跡を訪れ、その昔栄華を誇ったクメール王国が残した世界遺産の数々を見学、その美しさと力強さに魅了されたのでした。
アンコールワットにて
次に向かった首都プノンペンでは、介護専門の教育機関として同地に設立されたカンボジア日本技術大学を訪問し、担当者から同校における日本向けの介護実習生の教育の現状について説明を受けたほか、実際の授業風景を見学させてもらいました。
日本語を学び始めてまだ間もないということでしたが、予想していた以上のレベルの授業が行われていることに驚くとともに生徒たちの真剣な眼差しに圧倒されそうでした。
真剣に日本語を学ぶカンボジアの若者
そしてツアーの実質最終日に訪れたのがカンポンスプー州のボーセット校。これまでと同様、校門から歓迎会の会場となる教室までの沿道をカンボジアと日本の国旗を手にした生徒たちが埋め尽くしています。入口で生徒代表にクロマー(カンボジアの伝統的な手ぬぐい兼マフラー)を首に巻いてもらい、一行は生徒たちの歓迎を受けながら花道を進み、会場に向かったのでした。
生徒たちによる熱烈歓迎
その花道を歩きながらふと後ろを振り向くと、見覚えのある女学生の姿が目に入ってきました。当会が支援して高校生活を送っているソリヤちゃんです。学校側の配慮でしょうか、先生たちに交じり、一行の後をついてきていたのです。
久しぶりの再会です。ほぼ2年ぶりでしょうか。背丈が伸びて少し大人になったようです。顔には満面の笑みを浮かべています(ソリヤちゃんとの再会についてはこちらのレポートをご覧ください)。残念ながら、期待したほどには英語力が伸びておらず、相変わらずまともな会話にはなりませんでしたが、とても元気そうです。以前目についた悲しげな雰囲気はまったくといっていいほど感じられません。順調に高校生活が送れているようです。安心しました。
元気いっぱいのソリヤちゃん
会場では、まず同校の校長から現状説明と同時に新たな支援の要請がありました。具体的には職員のための部屋(建物)や生徒たちが情報技術を学ぶためのコンピューター室が必要だということでした。
現状説明をする校長
次に、当会の支援で建てられた女子寮を訪れ、そこで暮らす女子学生数名と話し合う機会を得ました。「あなたは将来何になりたいですか」との問いかけに対し、多くの生徒が教師を挙げたなかで今回初めて兵士という職業が出されたことは驚きでした。ただし、戦いに臨む兵士というわけではなく戦場で医師として働く、つまり軍医になることが目標だということでした。
いずれにせよ、それぞれがそれぞれの夢についていくぶん恥ずかしそうに、目を輝かせながら話してくれたのがとても印象的でした。
訪問団からスポーツ用具の贈呈
女子寮で記念撮影
それから近くのレストランで昼食をとった後、2名の生徒の家を訪問しました。感動的だったのは最初に訪れた女子学生の家で聞いた話。まわりに割と立派な家が立ち並ぶなかで、その子の家だけがヤシの葉と竹でできています。「よほど貧しいのだろうか」と思っていると、その子の母親からいい意味で驚くような説明がなされました。
訪れた女子学生の家
家の内部(電気は通じているようです)
実は、この女子学生には兄と姉がおり、兄は都市部の大学に通い、姉は高校生だということでした。つまり、子どもたちにいい教育を受けさせることにお金を注ぎ込んでいるがゆえに家がみすぼらしかったのです。
これには通訳を務めてくれた案内役のNGO職員の若者が感動。そのことを説明しながら目を潤ませていました。農村の家庭でそこまでして子どもの教育にお金をかける家族が少ないということなのでしょう。
もちろん、その話を聞いてわれわれも感動。参加者の中から「何とかしてこの子を高校に進学させてあげたい」という声が出てくるほどでした(実際、帰国後にその方から奨学金の申し出がありました)。
ニーザちゃんとその家族(右が母親)
ほぼ2年ぶりとなるカンボジアの農村は相変わらず牧歌的でのどかな雰囲気に満ちていました。そこに建つ家々は以前に比べると幾分ましになっているようにみえましたが、支援を必要とする子どもたちはまだまだ多くいます。
たとえ「大海の一滴」と思われようとも、貧困に直面しながらも強い学びの意思を持った子どもたちを一人でも多く支援できるよう、当会としましても、引き続き活動を続けていく所存です。
Comments