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代表 有留 修

第3回カンボジア農村教育事情視察ツアーを実施 (上)


カンボジアの子どもたちを支援する鹿児島人の会では2016年12月初旬、第3回カンボジア農村教育事情視察ツアーを実施しました。本日のレポートでは第1部として、今回のツアーの中から、12月6日に行われたコンポンスプー州ボーセット高校(現地で確認した結果、以前のバーセットの表記を改めました)訪問の模様をお伝えします。(※このあとお届けする第2部では、カンボジア子ども基金訪問について報告します。)

午前7時半にプノンペン市内のホテルを出発した訪問団一行は午前10時過ぎ、プノンペンの南西70キロほどのところにあるボーセット高校(中学校を併設)に到着しました。車から降りた一行を待ち受けていたのは、学校関係者と同校の生徒たち。手には日本とカンボジアの旗を持ち、校門から式典会場まで並んで出迎えてくれます。

まずは学校関係者による出迎えです

生徒代表が訪問団の一人ひとりの首にクロマー

(カンボジア伝統の手織り布)をかけてくれます

日本とカンボジアの旗を持った生徒らが出迎えてくれます

会場中央に設けられた来賓席に着席するとすぐに式典が始まりました。

まず、全員が起立しての国歌斉唱に続いて、伝統舞踊による歓迎の踊りがありました。演じているのは同校の生徒です。美しく華麗な踊りです。特に、繊細な指先の動きにはいつもながら、うっとりさせられます。

来賓席に着席した訪問団一行

起立して国歌斉唱

生徒による歓迎の踊り

踊り手の繊細な動きに見入る訪問団メンバー

踊りの後は、新しく建てられた学生寮に入る生徒代表や州政府の教育担当者などによるスピーチが行われたほか、訪問団を代表して肝付町在住の元教育者、益山貞一郎さんから集まった生徒に向けて激励のスピーチがありました。

その中で益山さんは「元気とやる気、根気と勇気」という「4つの気」の大切さを強調、逆境に負けず、家族や社会のために役立つ人材になってほしいと訴えました。

感謝の言葉を口にする寮生代表

州政府の教育担当者によるスピーチ

生徒を激励する益山貞一郎さん

それに続いて、今回学生寮とともに提供されることになった奨学金の授与式が行われました。奨学金といってもお金を渡すのではなく、学用品を中心とした現物支給です。今回奨学金を受けることになった27名の生徒が次々に登壇して、大きな袋に入った品物を受け取ります。

学用品等を受け取る奨学生

うれしそうな表情を見せる奨学生

そのほかにも学生寮で使うための備品(台所用品や寝具など)が寮生に送られたほか、奨学生以外にも別枠で、同校に通う生徒のうちで特に経済的な困難を抱えている家庭の子どもたちに学用品などの提供がありました。

寮生に送られた備品

そうした当会からの支援に対する感謝の印として、コンポンスプー州の教育部門からは記念の感謝状が送られました。立派に額装されたもので、「わが州の教育の質向上に貢献するご寄付に対し、深く感謝いたします」と記されています。

感謝状の授与

立派に額装された感謝状

さて、一連の行事が終わると、次はいよいよ学生寮との対面です。式典会場から寮に向かう途中気づいたのは、敷地の広さとその敷地内に建つ数々の真新しい校舎でした。学校関係者の説明によると、同校へは王室からの支援があり、その支援によって数年前に新しい校舎が建てられたということでした。(ただし、その支援は校舎に限られたものであり、学生寮までは考慮されなかったようです。)

目指す学生寮は敷地のはずれにあり、まわりを田んぼと池が囲んでいます。一昨年別の州の中学校に寄贈した学生寮に比べると、床が一段高くなっているのが印象的でした。これまで同様、今回の寄付の仲介役となってくれた現地NGO、EDFカンボジアのチャンディ代表によると、床が高くなっているのは雨季に雨が入り込まないようにするためだといいます。

また学生寮のすぐ隣には、真新しいトイレがあります。夜間に女生徒が暗闇の中を歩いて遠くのトイレに行くのは危ないので、ぜひつくってほしいという要請があり、それに基づいて建てられたものです。

学校の敷地の片隅に建つ学生寮

田んぼと池に囲まれた学生寮(後方に建つのがトイレ)

雨季に備えて床が一段高くなっています

中に入ると、すでにタイルが張られており、頭上には太陽光パネルによる照明が設置されています。これなら夜間の勉強も大丈夫です。

学生寮の内部

担当者にかぎが引き渡されました

そこに集っていた寮生に話を聞くと、顔に満面の笑顔を浮かべながら、感謝の言葉を口にします。みんな、本当にうれしそうです。彼らのよろこぶ顔を見ていると、支援できたことを本当にうれしく思いました。ご寄付いただいた匿名の篤志家の方のおかげです。本当にありがとうございました!

はじけんばかりの笑顔を見せる寮生

みんなで記念撮影

ネームプレートの除幕式

寮の前でも記念撮影

芳名帳に一人ひとりがメッセージを残していきます

学生寮を見学した後は、学校近くの食堂で昼食です。とても小ぎれいな食堂で、そして食事の内容も悪くありません。川魚と野菜がメインですが、日本人の口によくあう料理でした。

開放的な食堂で昼食

おいしそうな地元料理が並びます

さて、昼食を終えて、次に一行が向かったのはバーセット中学校に通う二人の女生徒の家です。最初に訪れたのは、中学3年生のレアムちゃん(16)。彼女の話を聞くなかで二つの驚きがありました。

まずは、彼女の夢です。通常、田舎の学校に通う生徒に将来の夢をたずねると「学校の先生」という回答が圧倒的に多いのですが、このレアムちゃん、夢は「NGOで働くこと」でした。ひょっとすると、カンボジアの農村に入り込んでいる各国のNGOのスタッフを見て、彼らにあこがれたのかもしれません。しっかり勉強して、夢をかなえてもらいたいものです。

のどかな田舎道を歩いて生徒の家を目指します

レアムちゃんと母親

記念品の贈呈

そしてもう一つの驚きは、彼女のお兄さんが先ごろ大学を卒業して就活中だったことです。これまで幾度となく田舎の生徒の家庭を訪問していますが、兄弟姉妹の中に大卒者がいたのは彼女の家が初めてでした。お母さんの説明によると、現在公務員の職を探しているとのことでした。(だからといって、彼女の家が裕福というわけではありません。)

みんなで記念撮影

次に訪れたのは、同じく中学3年生のソリヤちゃん(14)の家です。家が見えてくると、一人の老婆が近づいてきて、涙を流して歓迎してくれます。ソリヤちゃんのおばあちゃんです。

かわいそうに、ソリヤちゃんは両親が離婚して別の地方に行ってしまったため、そのおばあちゃんの家にあずけられ、そこで暮らしているのです。おばあちゃんは、日本からの支援でかわいい孫娘が学校に通えることがうれしくてたまらないのでしょう。彼女の涙を見ていると、自然とこちらの涙腺もゆるみます。

ソリヤちゃんの暮らす家

ソリヤちゃんとおばあちゃん

びっくりしたのは、そのきゃしゃな体つきに似合わず、ソリヤちゃんがかなりのがんばり屋さんだったということです。

実はこのソリヤちゃん、街中にある英語の学校に通っていて、月5ドル(日本円で600円程度)の月謝を払うために日曜日や祝日は近くの食堂で朝6時から夕方6時まで皿洗いの仕事をしているのだといいます。一日の稼ぎはわずかに1.25ドル、日本円にして150円程度です。時給にすると10円ほどです。それでも好きな英語を学ぶために、それだけ長い時間働いているのです。

家の前で記念撮影

せっかくなので、ソリヤちゃんに促して、今回の家庭訪問に同行してくれたアメリカ人女性と英語で話してもらうことにしました。この女性は、アメリカの平和部隊という、日本の青年海外協力隊のモデルになった組織から派遣されてきた隊員で、同校で英語を教えています。

ものおじせずに英語で受け答えするソリヤちゃん

これまで農村に何度もお邪魔して、子どもたちと英語で話をしてみようと試みたことがありますが、たいていの場合は、日本の子どもと同じで、はずかしいのか英語で話をする子どもはほとんど見つかりません。ところが、このソリヤちゃんは違いました。そのアメリカ人女性に対してものおじすることなく、簡単な会話ではありましたが、しっかりとした受け答えをしたのです。実にあっぱれというしかありません。

すると、それまで黙っていたソリヤちゃんのおばさんという人(ソリヤちゃんのお母さんの妹)が泣きながら話を始めました。なんでも、おばあちゃんとソリヤちゃんが自力では稼げないので、彼女が学校をやめて働きに出て、一家を支えているということでした。「自分は学校に行けなくなったけど、なんとかソリヤには学業を続けさせたい。彼女を助けてください」というおばさんからの心の叫びでした。

左側にいるのがソリヤちゃんのおばさん

名残惜しそうに一行を見送るソリヤちゃんのおばあちゃん

こうしてコンポンスプー州ボーセット高校での濃密な一日は終わったわけですが、今回もまた、いろいろなことを考えさせられる貴重な経験になったことは確かです。また、現地の子どもたちのためにやるべきことはまだ山のようにあるとの認識を新たにする旅であったともいえます。

今回の旅を踏まえて、次に何をすべきか――その一つの回答が、がんばり屋のソリヤちゃんに奨学金を提供するというプロジェクトです。具体的には、彼女が中学校を卒業した後、高校3年間の授業料や生活費を援助するというものです。

今回ツアーに参加したメンバーにも呼び掛けて、何らかの基金を立ち上げ、その計画を実現したいと思っています。準備が整いましたあかつきには、みなさまにもご支援をお願いするかもしれません。その際にはぜひご検討のほど、お願いいたします。


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